苦境が伝えられることの多いパナソニックのなかでも
近年の大ヒット商品となった女性向けの美容家電「ナノケア」シリーズ
まさに企業内で眠っていた技術と人材に注目した事例です。

パナソニックの美容家電の歴史は古く、
1980年代から女性向けの製品を開発していました。
しかし従来は技術先行で、製品の企画や開発、
マーケティングも男性が行なってきましたが
2005年に発売されたスチーマーの「ナオケア」からは
マーケティングを女性が担当するようになり、
広告や売り場での展開も変更し、製品のイメージが大きく変わりました。

現在のパナソニックでは初めてとなる女性だけの
「Panasonic Beauty」プロジェクトチーム
製品の新規企画からプロモーションまで全般に携わります。

チームに参加したメンバーの部署はバラバラ、上司部下の関係もありません。

同チーム結成のきっかけは、
従来発売されていた美容家電のスチーマーへの疑問を
ひとりの女性社員が抱いていたことです。
男性には、女性の肌のトラブルや悩みについて
細かいところがわかりません。
仕事から疲れて帰ってきた女性にとって
わざわざコンセントを差し込み、スイッチを入れて、スチーマーの前に
15分もじっと座っていなければならないのは面倒くさすぎます。
寝ながら使えるスチーマーがあればいいのに・・・。

開発担当の女性と雑談するなかで思いついたその製品のコンセプトを
眠らせてしまうのは惜しいと考えた彼女は上司に掛けあい
実際の商品開発にこぎつけました。

そうして発売されたナノスチーマーは、
当初の月間販売の4倍売れる大ヒットとなりました。

以降も30代の働く女性をメインターゲットに
450万本以上売れたポーチに入る電動歯ブラシなど
女性ならではの視点に基づく商品を次々と開発しています。

「Panasonic Beauty」チームのひとりの女性メンバーは
短大を卒業したあと入社10年間、在庫管理の仕事についていました。
「会社から何も期待されないまま、誰がやっても同じ仕事を社内ニート状態でいました」が
あるとき店頭販売企画担当へ異動することになります。
彼女は、デパートのコスメ売り場や高級ブランドの店舗にヒントを得ながら
従来の無味乾燥な家電用品の展示とはまったく違う
美容に関心がある女性に訴えかける商品ディスプレイを展開していきました。

国内の美容家電市場は、野村総研の調査によれば
2013年度中に1500億円以上に達し、今後も成長が見込まれています。

パナソニックは国内エステ家電市場をほぼ独占しており
テレビなど従来の「稼ぎ頭」だった市場が頭打ちとなるなか
数少ない「活路」となっています。

利用者と同じ目線で商品のことを見ることができる
女性だけのチームをつくったことが
パナソニックの美容家電成功の要因となったことは
間違いありません。